ヨルシカ

ヨルシカ配信Live「前世」ライブレポート【ネタバレ】 海の底で脳が溶けていった

配信ライブってPCの前で一人で過ごすんでしょ。不完全燃焼で終わりそう。もちろんヨルシカのライブには行きたい。二人を生で見たい。直接この目で見たい。二人の存在を確かめたい。どうせなら生ライブがいい。だから配信ライブはちょっとな。いつかくるその時のために、初めては直接のために取っておこう。やっぱり初めては何事も大事だから。この配信ライブ「前世」が発表されてから、「見たいすごく見たい」「いやでも初めてのヨルシカライブは配信じゃなくて直接見たいからやめとこう」の二つ感情を行ったり来たりしていた。

 

でも当日になって、「最高だった!」「綺麗だった」「泣いた…」「セトリ神…」「幸せな1時間だった…」「suisさんかわいい…」などの感想がタイムラインに流れてきた時、というか気になりすぎて自ら覗きにいった結果、もういてもたってもいられなくなった。えsuisさんかわいい…? 顔出ししたの…? 気づけばチケットを買っていた。

 

今後、ヨルシカの通常ライブはもうチケット取れるかどうかはわからない。ヨルシカはもう巨大アーティストだ。そもそも今後どのような形でライブをするかもわからない。だからこそ、確実に見れるこの配信ライブを見ない選択肢などこの世界のどこにもないんじゃないか。いつの間にか配信ライブを見ることを絶対的に肯定する揺るぎない信念を抱いていた。

 

というわけでアーカイブ鑑賞。

「開場までしばらくお待ちください」の文字だけがたっぷり15分。いつ始まるのかそわそわする。

 

そして気づけば海の中にいた。突如として海の中にいた。暗くはない。上から光が射してくる。魚が泳いでいる。エイ、サメ、無数の小魚たちが泳いでいる。魚たちは縦横無尽に、悠々と泳いでいる。気づけば時間が戻っている。時間軸が逆さまになっている。魚たちは泳いできた道をそのまま戻っている。どこへいく。どこへ向かう。そもそもここはどこだ。「前世」の記憶なのか。

 

海が揺らいでいく。視界がぼやけていく。何か円形のものが下から浮かび上がってくる。なんだろうこれは。そうだ、時計だ。針が逆戻りしている。時が戻っていく。そうか、これから「前世」に向かっていくのか。

 

そしてこの高揚感。経験がある。これは紛うことなくライブ前の高鳴りだ。緊張だ。これから登場する、初めてアーティストを直接見れるという高鳴りそのものだ。もちろん厳密には直接ではない。これはオンラインライブだ。だがその臨場感は生ライブそのものだった。

 

闇を切り裂くようにバイオリンの雄大な音色が鳴り響く。演奏のサポートメンバーが映る、キーボード、ピアノ、ギター…ざっと10人ちかくいる。

 

というか、ここはどこ…?

後ろでっかい水槽の中すっごい魚泳いでますけど…オープニングの映像を流してるんじゃないな…水族館…?あ、ここ水族館だ…。水族館で演奏してる…すごい…。

 

そんなことを考えていたらマイクをもった髪の長い女性が歌い出す

「変わらない風景」

あ、藍二乗…。

というか、す、suisさんだ…。暗くシルエットしかわからないが、間違いなくsuisさんがそこで歌っている…。

藍二乗…。出だしのsuisさんの歌声のうまさに驚く。涙腺をノックするようなピアノの音色とベースの重低音、最初の間奏からドラム、ギターが入り一気に盛り上がっていく。

 

「アコースティック編成」というのを誤解していた。なんとなくアコギ一本で「しっとり系のライブ」があるものだと思っていた。盛大な勘違いだった。目の前で怒涛の盛り上がりを見せてくれていた。あらゆる楽器が掻き鳴らされていた。本来のものが、今まで聞いていたものが軽く凌駕されていく。生の演奏に勝るものはないのだ。

 

suisさんは座ったまま右手にマイクで歌い上げている。左手を広げて前後左右に動かしながら。suisさんの斜め後ろに映るのがn-bnaさんで間違いないだろう。右手の人差し指にリングをつけている。

 

続く「だから僕は音楽を辞めた」で少し光が入る。suisさんの手首、腕が細い、右手の左手の中指と人差し指に指輪をしていて、紺色のワンピースを着ていて、裸足である。綺麗だった。

 

ヨルシカは、顔やプロフィールを公開していないバンドだ。だからこそ、貴重な本人映像にどうしてもシルエットや髪型、所作などが一際気になってしまう。

 

「suisさん髪長い…腰あたりまである…髪色、銀色…?」「てか指輪してる…」「n-bnaさんも指輪してる…」「てかサポートメンバー含めて指輪率たけえ…」「suisさん裸足寒くない…大丈夫…?」「座ったままあの声量ってどうなってんのバケモノなの…?」「息継ぎしてる…? 肺活量おかしくない…?」「あ、歩いた…suisさんが歩いた…!」

 

完全に小学3年生の感想を呟きながら、MCを一切挟まず次々に演奏される曲をひとつひとつ心に刻んでいった。

 

特に印象に残ったのは、「ただ君に晴れ」「春泥棒」「ノーチラス」。

「ただ君に晴れ」は昭和のレトロな喫茶店の一角のようなセットで、テレビの前でsuisさんは座って歌っていた。ゆっくりとしたテンポで歌われるこの曲で、丁寧にギターを弾くn-bnaさんの指遣いがテレビに映し出されるこのエモーショナルさ。

 

未配信の新曲「春泥棒」を終盤に持ってくるのもニクい。桜色に照らされるバックの水槽、魚たちが美しかった。なんの曲かわからない…新曲か…?とドキドキさせるのもライブならではだろう。

 

「ノーチラス」はこのライブでsuisさんが唯一立って歌っていた曲。n-bnaさんは演奏せず、ただ歌うsuisさんを見つめていたのが印象的だった。二人にエルマとエイミーを重ねてしまう。バイオリンの音色に優しく包まれながら、涙ぐんだ。

 

そうしてあっという間に1時間が溶けていった。美しくて、映像として見ているせいか、この目に映っていたものはすべてが幻だったのではないかという錯覚さえ覚えた。海の底で、酔いしれて、脳が溶けていくような感覚も味わった。まるでここではないどこかのような。「前世」の記憶だったかのような。

 

もちろんそんなわけはない。実際にヨルシカはこの現世でライブを作り上げた。オーディエンスがないからこそMCを一切挟まず、だからといって一切手を抜かず、「前世」の世界観と映像美を見せてくれたのだ。ライブは通常アーティストと観客で作り上げるものだ。だがこれは違う。配信ライブだからこそ、オーディエンスがいないからこそ、魅せることに100%の重点を置いて作り上げた一つの完璧な作品だったのだ。

 

拝啓 ヨルシカ様

もう心臓を貫かれてしまいました。何度も鳥肌が立ちました。suisさんの歌声に、n-bnaさんの紡ぐ楽曲に、ヨルシカメンバーが生み出したこの素敵な作品に、僕らもう息も忘れて瞬きさえ億劫なほどの最高な1時間でした。

 

セトリ

1.藍二乗

2 .だから僕は音楽を辞めた

3.雨とカプチーノ

4.パレード

5.言って。

6.ただ君に晴れ

7.ヒッチコック

8.青年期、空き巣

9.春ひさぎ

10.思想犯

11.花人局

12.春泥棒

13.海底、月明かり

14.ノーチラス

15.エルマ

16.冬眠

 

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