邦画

映画『海街diary』はそれぞれの温かさに包まれる、優しさの物語【ネタバレ感想】

綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず。女優四天王かよってくらいの共演作品、それだけでご飯8杯おかわりできそうな映画なんですけど、観てみました。何気にずっと気になってた作品だっただけに観れてよかった。

監督は誰かなって見てみたらやはり是枝裕和監督。鑑賞後に「いい映画みたなぁ、これだから邦画はいい…」と思わせてくれるのは全部是枝監督。『そして父になる』『万引き家族』『海街diary』、僕が観たことあるのはこの3つだけですけど、全部リリー・フランキーが出てる。 もうなんなんですかリリー・フランキー、映画界はリリー・フランキーで成り立っているんでしょうか。そして樹木希林さん、大竹しのぶさん、出演シーンはそこまで多くはないですけどこのお二方の存在感。そのほか堤真一、加瀬亮、鈴木亮平、坂口健太郎、風吹ジュン…いやキャスト豪華すぎか。予備知識なく観たんですけどもう先に進むごとに「え!この人も出てるの!? え!? この人も!?」と思いました。すごすぎ、最高の布陣でした。

 

本作は三姉妹(綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆)が腹違いの妹(広瀬すず)と一緒に暮らすことになり、複雑な家庭環境、とりまく環境、それぞれが抱える繊細な感情をそれぞれの優しさで救いあい、絆を深めていく物語です。

予告

海街diary予告篇

以下ネタバレありで感想を書いていきます。観てない人はご注意。

 

のっけから長澤まさみが悩殺してくる

始まったかと思えば長澤まさみのふとももが露わにされているのです。吸い込まれるような神的な始まり。そして追撃するようにブラジャー姿を見せてくれる長澤まさみ、もう隣に裸で寝てた坂口健太郎になりたいとしか思えません。『海街diary』の良さのひとつに、長澤まさみのエロさと色気が180%出ているところがあります。そしてそれは最初だけの特別というわけではなくて、ちゃんと随所随所でショートパンツだったり喪服姿だったり、いちいちエロいですまさみは。他の3女優と並んでも圧倒的なスタイルの良さ、足の細さ、ふともも…「こ、こんなにエロかったのか…」と唾を飲むほど。まさみはすごい。まさみありがとう。僕がさっきから”エロい”しか語彙力なくなってるくらいです。しかし本作の本質はそこではないのです。たぶん。

 

複雑で繊細な心をそれぞれの優しさが包み込んでいく

鎌倉に一つ屋根の下で暮らす長女の香田幸(綾瀬はるか)、次女の佳乃(長澤まさみ)、三女の千佳(夏帆)、その三人の元に一緒に暮らすことになった腹違いの妹、浅野すず(広瀬すず)。これもう100万人が突っ込んでるとは思うんですけど、思うんですけど、広瀬すずが「初めまして、すずです」って言ってるの笑いました。役名一緒かい。

この姉妹はそれぞれ個性がはっきり分かれてて、気持ちいいんですよ。幸は面倒見がよくしっかり者で、佳乃は奔放で男運なさすぎて、千佳は趣味が変わってるけどフレンドリーで、すずは素直で真面目で。そしてみんながみんな優しく、仲がいい。

でも、かなり微妙な関係なんですよね、三姉妹とすず。家族を捨てて出て行った父親が別の女と結婚して生まれた子がすずだから。佳乃と千佳は幼い頃に出て行った父親の記憶や思い出がほとんどないからあまり気にしてないんですけど、幸はちゃんと覚えていて。だからもしかしたら、「お父さんがすずの母親と出ていかなければ」って気持ちもどこかにはあったかもしれない。もういない父親とその女性の代わりにすずに強く当たる可能性だってあったかもしれないし、まったくなかったとは言い切れないと思う。でも幸はすずの母親よりも、ダメな父親とダメな自分の母親に対して怒っていたから、すずに対してはどこまでも優しかった。

 

すずの辛さ

すずも不幸だった。母親が亡くなり、父親が再婚して仙台から山形に引っ越して、新しい母親は頼りなくて、父親の面倒を最後までみたのはすずだった。新しい環境で不安の中、じっとひとりでがんばっていた。父親の死は悲しかったことだろう、辛かったことだろう、そんなときに泣きすがる母親はもういない、いるのは血の繋がりもない新しい家族で甘えることもできない、この先の自分の未来は不安でしょうがなかったことと思う。でも、我慢強くじっと耐えてたんです。人を思いやれる子だから、迷惑かけないようにと。そんな中、お姉さんたち3人がすずがずっと父親の看病をしていたことを何も言わずにわかってくれて、感謝してくれて、そこで触れた優しさは一生忘れないだろうね。別れ際に幸が言ってくれた「一緒に鎌倉で暮らさない?」という一言にどれだけ救われただろうね。即答で「行きます…ッ!」だったから。優しいお姉さんたちで本当によかったね、すず。

 

くすぶる葛藤、爆発する不安

三姉妹は本当に優しいんですけど、一緒に生活していると周りからひずみが生まれてくることがあります。それが爆発したのが祖母の七回忌。幸たちの母親である都(大竹しのぶ)が突然やってきます。

家を売ったらどうかという無神経な提案に怒りを抑えられなかった幸は、「この家捨てて出ていった人に何がわかるのよ」と突き刺すセリフを吐き、それに対して都も「元はといえばお父さんが女の人作ったのが原因じゃない」と反論します。それがぜんぶ聞こえてくるすず。すずは何も悪くない。生まれてきた子供に罪はなにもない。それはみんなわかってる。でもすずは、自分が悪いことのように思ってしまうんですね、果たして自分はここにいていいのかって、優しくしてくれるお姉ちゃんたちに辛い思いをさせてるんじゃないかって。

でも、それを思っていたのは幸も佳乃も千佳も一緒。すずにかえって辛い思いをさせてるんじゃないかって、「すずがここにきたことを後悔してなきゃいいけど」「私たちがすずを傷つけちゃったんだね」って、それぞれが葛藤を抱いていました。自分を責めるすずを「あれは誰のせいでもないんだよ」って、慰める幸の優しさを、きっとすずはわかってくれたと思う。

そしてその時にすずから出た一言が、思わぬ形で幸に突き刺さります。

「奥さんがいる人を好きになるなんて、お母さんよくないよね」

 

幸の葛藤

幸は佳乃がいつもダメな男に振り回されることを咎めていたりしていましたが、幸は幸で同僚の医師・椎名(堤真一)と不倫関係にありました。椎名の妻は精神的に病んでいるところがあり別れるに別れられないと言っていましたが、幸は内心はずっと不安定だったでしょう。奥さんがいる人を好きになってしまった、いけない恋愛とはわかっていても止められないこともあるとは思うんですけど、こういう恋は必ず誰かが傷ついてしまうんですよね。恋はどうやって始まったのか、それはこの映画からはわかりませんが、自制心の強い幸がそれでも止められなかったのは、椎名にそれだけ惹かれるものがあったんでしょう。実際、幸の父親の葬儀に行くことや、母親の数年ぶりの来訪といった重要なタイミングで適切なアドバイスをしてくれていました。まぁ、椎名の「親子は夫婦ほど簡単には切れない」って言葉に「夫婦だってなかなか切れないじゃん」って、つい日頃の不満が溜まった一言を放ってしまっていましたけど。

 

決断

でも、そんな関係に終止符が打たれます。椎名は先端医療を学ぶためアメリカ行きを決意し、妻とは別れるから一緒にきて欲しいという。幸は葛藤の末、椎名と別れて日本に留まる決断をします。父親の世話を一身に背負った結果年齢以上に大人なすずを見て、「もっとそばにいてあげられたらよかった」という申し訳なさと後悔から、日本に残ってターミナルケア(余命わずかな方への医療ケア)ともっと真剣に向き合いたいと思ったから。

「子ども時代を奪われたのはさっちゃんもでしょ」と椎名に言われた通り、幸だって子供の頃に父親も母親も離れていって、長女である自分がしっかりしなきゃとあれだけ気丈な性格になったのだから、なんかこう、つくづく誰か思いの性格だなって思います。きっと椎名の奥さんに対しても申し訳ない気持ちをずっと抱いていたでしょうね。あと、アメリカについていけなかったのはあの家を離れられないという気持ちが一番強かったからだと思う。椎名がそのまま日本にいるんだったら、きっと一緒になっていたはずだから。

 

それぞれの優しさが救いあう優しい物語

複雑な家庭環境の設定でよく見るストーリーはだいたい誰かが荒れ果ててるものなんですけど、『海街diary』はそこがちがうんですよね、みんなそれぞれ人に話せない思いや葛藤を抱えながらも、明るく家族を思いあって生きていく。口癖のように「誰のせいでもない」と言っていた幸しかり、誰かのせいにするんじゃなくて自分のせいにして生きていく。幸はだから、誰かのせいにして逃げた母親とぶつかったんですね。でも最終的に優しさを見せてくれた母親とのわだかまりが溶けて、これからはきっと二人もうまくやっていくでしょう。

なんか、ほんとよかったな。きれいで、美しくて、優しい映画だった。古い家の縁側、梅の木、山々の新緑、花火、海岸、波の音、一年を通した物語だったけど、特に初夏の匂いがした。好きでした。

 

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