邦画

『言の葉の庭』雨の日が好きになる物語【ネタバレ感想】

『言の葉の庭』を観ました。二回目。最初に観た時の一番強く抱いた率直な感想は、雨が好きになった。雨の日に美しい日本庭園に行って、本を読んだり朝から金麦飲んだりしてみたくなった。そして本当に単純なんだけど古典も万葉集も勉強してみたくなった(実際には勉強しないんですけどごめんなさいでも興味は持ちましたほんとです)。

↓最初に観た時のツイート

 

今二回目を観てこの文章を書いています。で、これは一個前の記事にも書いたけど『天気の子』公開前に新海誠監督の作品を観ておこうというにわかの発想から観るに至ったわけですが、すきです。この作品もとても。新海誠監督の作品はどれも映像が美しくて、ストーリーだけでなく単純に「あぁ綺麗だなぁ」って心が洗われるようです。とくにこの作品は雨の描写がとても綺麗で、水面に広がる波紋とか、こんな風に映像で魅せられるんだなって感心しちゃいます。

 

あらすじ

映画『言の葉の庭』予告編映像

靴職人を目指す高校生・タカオは、雨の朝は決まって学校をさぼり、公園の日本庭園で靴のスケッチを描いていた。ある日、タカオは、ひとり缶ビールを飲む謎めいた年上の女性・ユキノと出会う。ふたりは約束もないまま雨の日だけの逢瀬を重ねるようになり、次第に心を通わせていく。居場所を見失ってしまったというユキノに、彼女がもっと歩きたくなるような靴を作りたいと願うタカオ。六月の空のように物憂げに揺れ動く、互いの思いをよそに梅雨は明けようとしていた。

 

では印象に残ったシーンを語っていきます。以下ネタバレ。映画を観てからの方が楽しめます。

無料でhuluで観る

雨が好きだから出会えた二人

 

最初にいいなと思ったのは冒頭。タカオは雨の日になると地下鉄に乗らず地上を傘を差して歩く。子供の頃は空をもっと近くに感じていて、空を連れてきてくれる雨が好きだからという理由。子供の頃は、もっと雨を楽しんでいたような気がする。もっと空を見上げていた気がするな。新海監督の映画はやっぱり天気に関する描写が多いですね。今さらながら。

雨の日が好きな高校生一年生のタカオは一限をサボって日本庭園に靴のスケッチをしにいく。そこでユキノ先生に出会う。出会った時はまだタカオは女性が自分が通う高校の古典の教師だということは知らない。ただしユキノは生徒ということに気づいて、古典教師と気づいてもらうように短歌でメッセージを送る。

「鳴神(なるかみ)の 少し響(とよ)みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ」

(雨が降ったら君はここに留まってくれるだろうか)

タカオはわからなくて完全にぽかんとしちゃうんだけど(大丈夫だタカオ、視聴者も全然わかってねえから)、雨の日に仕事しないで日本庭園で金麦飲んでとチョコレート食べてわけわかんない短歌詠んで去っていく謎の美女に惹かれちゃっていくわけです(大丈夫だタカオ、俺も惹かれるから)。

短歌の意味を分かったときに惚れませんか

 

物語の後半にタカオはその短歌の意味を知って、その返し歌を詠むわけなんですけど、万葉集でユキノ先生が詠んだ短歌を見たらしいんですね。その意味を知ったとき、ぜったい惚れると思うんですよ。

だって

「雨が降ったら君はここに留まってくれるだろうか」

ですよ??

「え?留まってほしい?俺のことすき??ねえ俺のことすきだよね???」

ってなりますよね絶対なる。

で、その返しを詠むタカオ。

「鳴神(なるかみ)の 少し響(とよ)みて 降らずとも 我は留まらむ 妹し留めば」

(雨なんか降らなくてもここにいるよ)

 

恋だ。

 

タカオはユキノ先生との歳の差を気にしてるんだけど(タカオ15歳、ユキノ先生27歳と12歳差)、でももう大好きになっちゃってるんですよね。一緒にいるときが一番素敵で最高に幸せな時間なんですよね。雨の日がすきなのはもちろんなんだけど、雨の日にユキノ先生と出会えることがなにより楽しみだったから。

 

上級生に殴りに行くタカオの度胸

 

ある日、高校でユキノ先生とすれ違って初めて教師であることを知ったタカオ。そして三年生の彼氏がユキノ先生に惚れてしまい、逆恨みしてクラス全員で嫌がらせして学校にこれなくなるまで追い込んだって事実を知る。最初は「ユキノ先生なんて誰かも知らない」ってスタンスで友達とキャッチボールしながら話聞いてたタカオだったけど、それ聞いてから放課後ひとりで殴り込みにいくというカッコよさ。

 

いざ行ってみたら本当に見事なまでに性格最悪な連中で、明らかに体格よすぎる喧嘩つよそうな奴とか性格どこまでも捻くれてそうな奴とかが周りにいるのに、元凶となった女子の先輩に堂々とビンタかましたタカオがカッコよすぎました。

 

そして結局ぼこぼこになっちゃうんだけど、絆創膏貼りまくった顔でユキノ先生に庭園であったとき、「酒飲んで山手線のホームから落ちました」ってジョーク言ったりしてごまかす。良いやつすぎる。ユキノ先生は自分のためにタカオが上級生に殴りに行ってくれたこと知らないんだよなー。知ったら結末違ったりするのかなー。

ユキノ先生の部屋で過ごすあの時間

 

一番すきなのは突然のどしゃ降りでずぶ濡れになってユキノ先生の部屋に呼ばれ、二人で過ごすあの時間。ユキノ先生は濡れたタカオのシャツをアイロンで乾かして、その間にタカオはオムライス作って、ふたりで笑いながら食べて。コーヒーを淹れて、二人は思う。

「今まで生きてきて、今が一番、幸せかもしれない」

そしてタカオの告白。

「ユキノさんがすきなんだと思う」

ぜったいユキノ先生嬉しかったと思う。タカオのこと好きだったから。でも、「ユキノさんじゃなくて、ユキノ先生でしょ」といい、来週四国の実家に帰ることを告げる。続けて「私はあの場所(日本庭園)で一人で歩く練習をしていたの。靴がなくても」と。靴職人を目指すタカオに対して、これは厳しい言葉だったに違いない。現実的に二人は一緒になれないから、あえて突き放すような言葉を選んだユキノ先生の気持ちもわかる。ユキノ先生は優しい人だから、きっと自分の胸も痛んだだろうけど。

 

傷ついていたたまれなくなったタカオはまだ乾いていない制服を着て部屋を去っていく。残されたユキノ先生は二人が過ごしてきた記憶を思い出しながら泣く。本音が言えなかったことを後悔して、でも後悔したくなくて、裸足で駆け出してタカオを追いかける。

 

ラストシーンにかかる秦基博の「RAIN」

 

階段の踊り場で雨を眺めていたタカオ。ここで”らしくない”タカオが爆発する。

「さっきのは忘れてください。やっぱりあなたのことが嫌いです。最初からあなたはなんだか嫌な人でした」と言って、年下で、生徒で、子供で、対等でないことを気にしていたことを吐きだすように。「あんたは一生ずっとそうやって、大事なことは絶対に言わないで、自分は関係ないって顔して、ずっと一人で生きてくんだ!」と思ってもないことを言って、ユキノ先生はたまらずタカオに抱きついて「あなたに救われていた」と涙する。二人で泣いて、抱き合って。ここ。ここで「Rain」が流れてエンディングに入っていく。

言葉にはできず凍えたままで 人前ではやさしく生きていた しわよせでこんな風に雑に 雨の夜にきみを抱きしめていた

 

秦基博の曲はさすがにエモーショナルだなあ。涙して抱き合って流れる曲に、やさしく響く秦基博の歌声。

最後、二人は雪が降る冬の季節に手紙でやり取りをしながら、いつか会いに行こうとタカオが言って終わる。恋愛的に結ばれるかどうかは置いといて、あの雨の日に抱き合った後も、こうして関係が良好につながっているのが素敵だなと思います。