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『宇宙(そら)を駆けるよだか』を何も考えずに第一話観てくれ。気づいたら全部観終わってるから【ネタバレ感想】

危なかった…危なかった…。危うくこんなに面白いドラマを見逃すところでした。美容室のお兄さんが「Netflix入ってます? いや、僕もお客さんから勧められて軽い気持ちで観始めたドラマがあるんですけど、もう深夜3時まで全話一気見でしたよ。超面白いですよ」といって勧めてくれたのが本作『宇宙(そら)を駆けるよだか』です。

 

タイトルを見て宮沢賢治の「よだかの星」を思い出しました。醜い顔のよだかは鳥の仲間からも忌み嫌われ、果ては自分が生きるために虫の命を奪っていることに耐えられなくなって命をかけて夜空を飛び続け、星になったお話。

 

僕も軽い気持ちで観始めたんですけど、美容室のお兄さんとまったく同じこと思いました。全話一気見。世の中、美容室のお兄さんがいうことはだいたい間違いないです。

よくある入れ替わり設定だけど、”狙って”入れ替わりなのが面白い

「もしかして、わたしたち、入れ替わっちゃったー!?!?」ってよくあるやつじゃないんですよ。ブサイクで性格も暗くて友だちもいなくて家庭環境も悪いひとりの女子が、クラスで一番可愛くて人気者の女子を”狙って”、意図的に入れ替わってしまう話なんです。偶然ではなく故意。

 

孤独にいきて、通りすがりの同級生に傷つけられて、好きになった人には振り向いてもらえない人生からの脱却です。でも、これ入れ替わられる方はたまったものではない。

突然顔が変わっていて、家族にも恋人にも友人にも気づいてもらえず、孤独になりクラスでも家庭でもひとりぼっち。あまりにも理不尽な事態。唯一入れ替わったことを知っている相手は知らんぷりを通して自分の身体でこれからの人生を楽しく生きようとしている。ずっと好きだった人とようやく恋人になれたのに、その人も奪われてしまう。耐えられません。僕なら確実に発狂する。

そんな入れ替わられてしまった小日向あゆみの光になってくれた人物がいます。火賀くんです。

火賀くんイケメンすぎて惚れる

誰も気づいてくれないと悲観するあゆみの入れ替わりを誰よりも早く気づいたのが火賀くん。そもそも気づいたのが、文化祭の大道具係で海根然子(中身はあゆみ)と一緒に作業してたから。誰とでも分け隔てなく話せる火賀くんだからこそあそこまであゆみの話を引き出せたんだろうし、あゆみも入れ替わって初めて普通に話せていました。

 

元気を取り戻したあゆみはクラスに買い物を頼もうとするも、みんなに冷たくされて、傷ついたあゆみに追い打ちをかけるように然子(外見はあゆみ)から「海根さんは悪くないの。元はと言えば海根さんの気持ちも考えずにしろちゃんと付き合った私が悪いの」と最低の一言を放たれ、クラス全員から非難を浴びる。

そこに火賀くんが「誤解っていってるやろ!!」と怒声をあげてあゆみをかばいます。

 

そして二人きりになったとき

「あゆみなんやろ?」

「悪かった。すぐ気づかれへんくて」

「どんな姿しててもわかるよ。あゆみは…あゆみなんやもん」ってかっこよすぎやさしすぎの言葉連発して最後にあゆみの好きないちごオレ渡すんですよ!! なにこれ!! かっこよすぎでしょ!!!!

 

そのあとも、然子の策略で教室のお化け屋敷の暗闇に閉じ込められたあゆみを助けたり、そのあと一緒にいる時間が増えたからあゆみの友達に理由を問われた時「おれ今海根さんが好きやねん。猛アピール中」というかわし具合。天才かと思った。それクラスの奴らに聞かれて茶化されたときも、火賀くんがブス専とからかわれて傷ついたあゆみをかばうように「俺にとっては、今の海根さんがいちばんかわいい」ですよ。

完全に名言製造機と化してる。おそるべし火賀。

それでも報われなかった切なさが泣ける

はっきりいって、火賀くんがいなかったらあゆみは絶望の淵から抜け出せていなかったでしょう。火賀くんは誰よりあゆみに寄り添って、元の体に戻すことに尽力した。それに元に戻らなくても好きだと告白する男前っぷりといったらないです。

 

正直、もうここまでされて惚れない人間いないと思いましたけど、火賀くんの想い、あと一歩というところで届かずでした。最後は悪役を演じて全てを救った水本公史郎をたたえて、自分は身を引いたんです。お前、どこまでいいやつなん…お前の心、澄み渡りすぎやろ鬼滅の炭治郎かよ。

 

入れ替わりが元に戻って、教室に入るのを尻込みしている然子の背中を押して、クラスメイトに溶け込んでいる様子を見届けて泣き笑うラストシーンの火賀の表情、これまちがいなく本作MVPです。

 

ちなみに火賀を演じるジャニーズWESTの重岡くん、映画『溺れるナイフ』でもかなり近い役所やってるんです。見てない人は是非見て欲しい。菅田将暉と小松菜奈主演で、重岡くんが二人を引き立ててる感が半端ない。僕はこのドラマを観て彼の演技力に感嘆するとともに、「また同じ役かよ…」と悲しさで胸がいっぱいになりました。

しろちゃん、策略家すぎて震える

では次に公史郎について語りましょう。最初はなんであだ名「しろちゃん…?」って違和感がすごかったですね、こうしろうの「こう」ちゃんじゃなくて間をとった「しろちゃん」ですね。で、このしろちゃんがほんと何考えてるか全然わからなかったんですよ。もう見事なまでに。

 

え、誰も助けてくれない然子に優しく荷物持ってあげてたよね…?優しかったよね…?

え、「俺はあゆみちゃんの顔が好きなんだ…?」「このまま二人が元に戻らなくてもいい…?」え…?

やっぱ悪いやつなの…?でも文化祭で暗闇に陥れられたあゆみを助けるように火賀に連絡したのはしろちゃんだし…え…?

「勉強もスポーツもできるのにいつも人が集まるのは火賀だ」だって…?そんな理由で「あいつらの人生終わらせてやる…」?え…こわ…。

え、「信じてるからね、しろちゃん」に対して「ほんとバカだな」って言った…?え…?

 

って、もう善と悪が交互に現れるから完全に何考えてるか意味不明。でもその正体は完璧に善でした。火賀と一緒に学校から飛び降りる直前にようやく真意を伝えたけど、なかなかの賭けですよ。なかなかどころか大博打。

 

しかも具体的には説明せずに「このまま俺と飛び降りてくれ。火賀、俺を信じられるか?」だけですからね。火賀もさすがに疑心暗鬼になってたと思うし、なんなら直前に「お前は目障りだった」みたいなこと言われてますからね。敵を騙すにはまず味方からとはいえ、ここまでいう必要あった…?とは思った。思ったけど、この徹底ぶりが最終的には成功したのでよしとしましょう。

 

あゆみの入れ替わりを気づいたのは火賀よりは遅かったけど、ちゃんと異変を察して暗闇で確かめたのはさすが幼馴染かつ恋人ですよ。しかも気づいていながら然子を信頼させるため完全に悪役を演じきりました。見事に然子、そして視聴者(僕)は騙されましたから。

四人で入れ替わりを繰り返して元に戻る作戦を閃いたのも彼ですからね、さすが学年一の頭脳。

然子に同情の余地はあるが、人の人生を奪っていい道理はない

そりゃ、然子に同情の余地はありますよ?

小さい頃に父親は帰って来なくなって、母親との関係は完全に破綻して、家庭環境は荒廃してました。母親、娘が飛び降りたっていうのに「面倒かけんじゃないよ!!」っていって殴ったの、さすがに狂気すぎる。

 

唯一優しくしてくれた公史郎はあゆみに告白するっつってるし、あゆみも経験した体育でペアがいなくて一人になるって状況はきっと過去幾度とあっただろうし、同級生からは罰ゲームの対象として扱われるし、こんなの耐えられるわけがない。そりゃ死にたくなるよ。だから本当に入れ替われるかもわからなくても、命がけでビルの屋上から飛び降りたのは、こんな辛い人生から抜け出したい、藁をも掴みたい思いの一世一代の賭けだったんだと思う。

 

でも、だからといってあゆみの人生を奪っていいわけがない。あゆみは元々優しく手を差し伸べてくれたときだってあった。そんな優しさを無下にして逆恨みしたのは悪いよね。

 

その卑屈な性格は変わらないから、あゆみの体を手にしたもののちっとも幸せにならなかった。でもあゆみが中に入ったことで、笑うと可愛いことが判明したし、声とかめちゃくちゃ可愛かったし、ほっぺたも最強に柔らかいんだから、元に戻ってからはうまくやっていけるでしょう。火賀たちとは最終的に仲直りしたしね。

 

あゆみのかわいさについて

このドラマが伝えたかったのは、外見だけ入れ替わったって幸せになれないよ、中身が大事だよ!ってことだと思うけど、それを踏まえた上でもあゆみのかわいさは異常。つまり、演じた清原果耶、最高にかわいかった。なんですかあの透明感。性格悪い然子が中に入っていてもかわいさはとどまることを知りませんでしたよ??さすが今をときめく朝ドラ女優。「おかえりモネ」、観ます。

 

そしてあゆみ本来の性格もとてもいいんですよね。やろうと思えば入れ替わった事実をみんなに伝えるの、実際はできると思うんですよね。然子が知らなくてあゆみだけが知っている情報なんて山ほどあるし、それを家族や友人に話せばイチコロです。然子はあゆみと入れ替わりそのままで生きていこうとしている策略がバレて、死ぬほど生きづらくなるはず。それをせず元に戻ることに注力したし(もちろん元に戻るのが一番良いが)、最後まで然子をかばった。マジで優しすぎです。

総じて四人の演技力、半端ない

入れ替わりってかなり難しい演技を問われると思うんですけど、本当に演じた四人うまかった。特にジャニーズの重岡大毅と神山智洋。火賀くんと公史郎の入れ替わりとか雰囲気から表情完璧でしたよ。あのクールな公史郎でも「あ、確かにこれ中身火賀くん入ってんな」ってくらい変わってましたからね。然子を演じた富田望生さんも素晴らしかった。卑屈な性格と明るくて優しい性格の二つを完璧に違い分けてました。

 

にしてもあゆみと入れ替わった公史郎は、ずるくない?? 最後の赤月まであゆみの体で生きるんだよ? あれさらっと流されたけど、もう『君の名は』の瀧くんみたく、自分のおっぱいとか超揉めるんだよ?? お風呂も入れるんだよ?? ねえ、ちょっとこれ羨ましすぎるシチュエーションじゃないですか。まさかそこまで考えて公史郎は四人の入れ替わりを考案…?

これは確かに、火賀くんも完敗ですわ。