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『パラサイト 半地下の家族』はコメディとホラーの融合に心臓が追いつかない【ネタバレ感想】

やっと観てきましたパラサイト。日本で公開になったのは2019年12月27日で僕が観たのは2020年2月28日なのでちょうど二ヶ月経ってたんですけど、間に合ってよかった、映画館で観れてよかった。この映画のすごいところは、観る前よりも観終わってからの方がウズウズするところ。とにかくこの映画を観た誰かと話したくなるんです。貧困層と富裕層の格差も、コメディ映画かと錯覚するかの如くブラックユーモアも、忘れられないエッチなシーンも、予想だにしない怒涛の展開も、衝撃的なラストも全部、誰かと語りたくなるんです。これがすごい。映画館で隣に座ってたおじいちゃん誘って飲みに行けば良かったって後悔してるんですから。でももうおじいちゃんには会えないし、映画好きの友達いないし、だから書きますよ、もういろんな人がたくさん映画評書いてるけど、僕ももちろん書きます。ウズウズしてるからです。

 

カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドール、アカデミー賞(オスカー)で作品賞の受賞。オスカーでの外国語(英語以外)の作品の受賞は史上初。作品賞の他にも監督賞、国際映画賞、脚本賞の四冠です。

映画詳しくてなくても、なんか凄いんだなっていうのが伝わってくれれば大丈夫です。(なお僕も映画詳しくないです

あらすじと予告

簡単にあらすじを話すんですけど、物語の主人公は韓国の「半地下」で暮らす貧しい全員無職の四人家族です。数々の事業に失敗してきた父ギテク、元ハンマー投げメダリストの母チュンスク、大学受験に四度失敗してきた長男ギウ、美大に落ちたがスキルを磨いている長女ギジョン。ある日、ギウは大学生の友人ミニョクから、家庭教師の代打を頼まれる。相手はIT企業社長パクの高校生の娘で、ギャラもいい。願ってもみない誘いに乗ったギウは、パク社長の夫人に気に入られ、続いて妹のギジョンも家庭教師に紹介する。そして富裕層の生活にパラサイトのように寄生していくが、彼らに想像だにしない展開が待ち受ける…。

 

第72回カンヌ国際映画祭で最高賞!『パラサイト 半地下の家族』予告編

 

僕はあらすじだけさらっと見てから映画観に行きましたけど、あらすじと予告は別に見なくても全然大丈夫ですし何も予備知識なくても楽しめます。僕も韓国の文化とかまったく詳しくないので。とにかくこの映画はネタバレなく観た方が楽しめることは間違いないです。監督のポン・ジュノも「ネタバレだけはしないでください」と言ってます。でも、観終わった後に、いろんなネタバレ記事見るのは楽しいですよ、あのシーンには文化的にそんな意味があったのかとか、単純に教養になりますしね。

では、以下ネタバレありで感想を書いていきますのでご注意ください。印象的だったことを書いていきます。

キム一家の胆力、演技力、狡猾さ

純粋にこれ、なんですよ。キム一家の度胸! 貧困の家族が、足を踏み入れたことのない豪邸の家族の敷地に行くんですから、もっとおどおどするものじゃないかと思うんですけど、キム一家はそれが一切ない。

なに? あの堂々としたふるまい?? どこで身につけた???ってレベル。半地下生活のハングリーさが生み出したものなのか。

 

いずれにせよ、すべての始まりはギウです。元々家庭教師だったミニョクの紹介とはいえ、ちゃんと面接もありますし、初回の授業チェックもありました。パク社長の奥様ヨンギュは「ミニョク先生がとても良かったので、あのレベルじゃないと家庭教師つける意味がないっていうか…」と初対面のギウに迫り、「これはけっこう厳しい奥様か…」というのが僕の第一印象だったんですけど、これが見事に裏切られます。奥様は純粋でマジで最高。

初回の授業、ギウは大成功します。いきなり高校生の娘ダヘの腕をとり、脈を測って「解けない問題が一問目に来ていたら受験はパニックになってる」「心臓は嘘をつかない」と言い、大真面目な顔で「僕は君がどのようにして受験を突破するかしか興味がない」(※セリフうろ覚え)とできる家庭教師のセリフNo.1を言い放ちます。

この一連の流れが奥様とダヘに刺さった。初回の授業チェックでいきなり娘の手に触れる大胆な「いや、今のアウトじゃね?」的行動が、パク一家に全部受け入れられていくんです。もうそれからは痛快。これコメディ映画だっけ?ってなんども思いましたし、実際前半部分は本当にそうです。

 

妹ギジョンの人気美術家庭教師設定の不敵な演技。授業チェックも「ダソンと二人だけにしてください」とクールに言い放ち、見せない。「なんかこの人すごそう…」の空気を作り上げる。息子ダソンがギジョンに対して手を前に組んで丁寧にお辞儀してたの笑った。あのわんぱくなダソンをどのようにして懐柔させたんだギジョン

 

家庭教師としての実績はともかくとして、とりあえずギウもギジョンもパク一家に気に入られます。ここまでは良かった。ここまでは良かったんだけど、ここから、キム一家はある意味で成功し、ある意味で墜落していきます。

 

他人を追いやって居座るのは許されることではない

ギジョンは車の後部座席に自身のパンティを残し、セックスを疑われた運転手はクビになります。それにしても代わりに運転手になったギテクのベンツドライビング技術と、道の詳しさよ。おそらく裏で用意周到に「計画」を練り、あらゆるシチュエーションを想定して覚えたのでしょうが、それにしてもよくやった。

 

そして全幅の信頼を得ていた最大の難敵家政婦さえ、その桃アレルギーを利用し『結核患者』ということにして追い出すことに成功。母チュンスクがまんまとその穴に入ります。

 

簡単にいえば、ギウとギジョンの家庭教師は空いた席に座っただけ。でも、そこから父ギテクと母チュンスクの仕事のために、運転手と家政婦として元々働いている(一見なんの落ち度もない)二人を追いやりました。自分たちの幸福を優先して。これが彼らの転落の予兆だったのでしょう。「二兎を追うものは一兎をも得ず」「虻蜂取らず」等々、日本にも「欲張るとどちらも手に入らない」ということわざがありますが、キム一家は欲張ったことにより、結果全てを失うことになります。

ギテクの無計画な失敗

全てを崩壊させたのは、ギテク。ギテクがパク社長を殺さなければ、キム一家はなんとかなっていたかもしれない(ギジョンは命を落とすけど)。彼らが詐欺一家であることを知った元家政婦は脳震盪を起こしそのまま地下で息絶えたし、その夫はギジョンを包丁で刺した後、逆にチュンスクに刺されて死亡するから。

でも、四年地下にいた男の悪臭に鼻をつまんだパク社長の行動に、怒りで我を忘れたギテクはパク社長を刺し殺してしまう。悲劇であり、惨劇。

 

ギテクは”匂い”に敏感になっていた。半地下の暮らしでこびりついていた匂い。自分から発せられる匂いを、自分のいないところで臭いと言われたら、めちゃくちゃ傷つきますよね。ギテクの場合は、パク社長に匂いだけは絶えられないと言われるところをギウとギジョンと子どもたちに聞かれていたわけだから、その心情は慮れる。過敏になる。だから翌日の運転で奥様が匂いを気にしていて車の窓を開けた時も、終始不快なオーラを出していた。

 

そしてその匂いが引き金になってパク社長殺害。これはなぁ。前日の豪雨による半地下の惨めさ、格差、目の前で娘が刺されたことの動揺、パニック、いろんな思いが突発的に複合的に重なった結果かもしれないけど、それにしても理性が飛び過ぎたとは思う。実際殺意はなかったはず。そこは抑えて欲しかった。

 

ギテクはその前日、ギウに「計画は立てると人生その通りにいかない」「無計画、ノープランがいい」と言ってるんです。ノープランで崩壊させたギテク。それはあまりに”フリ”が強すぎるでしょ…。

ギジョンのタバコがなんとも切ない

キム家族で唯一命を落とすのが、ギジョン。ギジョンは終始クールだったけど、その実情は一番穏やかじゃなかった。

純情な奥様を「ネットで検索した心理術を話したら簡単に騙された、バカみたい」と笑ったり、一家で豪邸で飲んでる時、自分が追い出した元運転手が「今は他のもっと稼ぎのいいところで働いているだろう」という話題が出ると声を荒げたり、豪雨の夜に一番途方にくれて嘆いたりと、一見クールなようで、実は自分を抑えられないところがある。

 

貧しさを呪い、美大に行きたくてもいけない、予備校に通いたくても通えない、パク一家に取り入りやっと少しはまともな生活ができるようになったかと思えば一転して転落。ギジョンがトイレに座って吸うタバコのシーン、全てを諦めたようで、なんとも印象的で、切なかった。

一切描かれないパク一家のその後

この映画はキム一家には感情移入できないけど、パク一家にはできる。金持ちにありそうな傲慢さが彼らには見られず(チュンスクはお金があると気持ちに余裕ができて優しくなると表現していた)、いわゆる”良い人”たちだ。だからその生活を奪われたのは不憫だとしか言いようがない。

ダヘは何を思っただろう。大黒柱である父を失い、好きだったギウは自分たちを騙していたことがわかって、それをどのようにして気持ちを整理するんだろう。恵まれていた生活は一変するだろうな。悲しくて苦しくて、救われない。これまでの生活はパク社長におんぶに抱っこだったわけだけど、奥様の美貌と純粋な性格、子供たちを思う気持ちは強い、なんとかなってほしい。そして今後の人生はどうか騙されないように気をつけてほしい。

 

韓国映画、実は観るの初めてなんですけど、面白いですね。他にもいいのあったら教えてほしいし、色々見てみたいと思いました。日本でももっと浸透すればいいなと思います。

いやーでも本当にいい映画だった。もっと色々書きたいことありますけどね、北朝鮮のブラックジョークはあれ韓国でよくネタにされてんのかな?聞き慣れたようなあの独特の言い回しとか、あの場面でよくやったよなぁとか。

あ、あとエッチなシーンの奥様の乳首愛撫「時計回りで」の話をし忘れてましたが、ほんと大事なことだから、やってほしいこと、求めたいことはちゃんと声に出した方がいいんだと思います。これはエッチなシーンに限らずですけど。以上です。

 

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