邦画

『泣きたい私は猫をかぶる』ネタバレ感想 逃げたっていい、だけど悔いのないように生きたいと思える

最近、ヨルシカにハマっている。『だから僕は音楽を辞めた』で彼らの音楽に出会ってからは、貪るように曲を聴きあさっている。そんな中、『花は亡霊』がNetflixで公開されたアニメーション映画『泣きたい私は猫をかぶる』の主題歌になっていることを知り、さらに『夜行』『嘘月』も挿入歌と聞いたらこれはもう映画を観るしかない。

 

本作は、女の子が猫になる物語だ。は?と思うかもしれないが、文字通り、人間が猫になる。「猫をかぶる」は本性を隠しておとなしそうになることを意味するが、本作のタイトルにある「猫をかぶる」は猫のお面をかぶることで人間が猫になることを意味する。

 

あらすじを簡単に書く。

「無限大謎人間」と評されるほど奇想天外に謎な行動をする笹木美代(通称”ムゲ”)(声:志田未来)は、クラスメイトの日之出賢人(声:花江夏樹)に恋をする。再三のアタックにもまったくなびかない日之出に対し、ムゲは「かぶると猫になることができるお面」をかぶって猫になり、日之出と接する。人間のままだとクールにあしらわれるが、猫だと優しく温かく接してくれる日之出にムゲはさらに惹かれていく。

ある日、猫の状態で「思ったことがはっきり言えない」と日之出の悩みを聞いたムゲは、励ますために思いを込めた手紙を書くが、悪戯好きの男子に奪われみんなの前で内容を読まれてしまう。日之出は恥ずかしさから「お前のことなんか大嫌いだ」といい、傷ついたムゲは泣きながら走り去り、いっそ人間より猫の方がいいと、人間を捨て猫になってしまう。

 

さて、以下は率直な感想。ネタバレ注意です。

予告

本予告『泣きたい私は猫をかぶる』公式 (6/18配信スタート)

 

・いちばん大正解な展開が良くも悪くもあった

こういうアニメーション映画を観るとどうしても『君の名は』や『天気の子』といった新海誠映画の凄さを実感してしまう。心をえぐられるような喪失、大逆転の救い、息を呑むような美しい映像、そういった観終わってからも数日心に残って引きずってしまう類のものは、本作では味わうことはできなかった。

人間が猫になるという設定は確かに特別だけど、物語の展開としては良くも悪くも想像通りに進んでいく。きっとムゲは人間に嫌気がさして猫になるんだろう、だけど日之出が助けに来てくれて、ムゲは元に戻るんだろう。そして二人は両思いになって、ハッピーエンドで幕を閉じるんだろう。と、頭の中で描くもっとも大正解な展開が、まさにその通り1ミリも裏切られることなく起きる。

大正解ではあるけれど、ただそこに斬新さはない。物語で感情が動くのは自分の想像を超えた予想外の角度から攻めて来られる時だ。自分の想像を超える発想によって心が驚かされることをどこかで期待していたんだと思う。だからこそ純粋なハッピーエンドで心温まりたい時にはすごくいい作品じゃないかな。

 

ただ、観ていて気になったのが以下3点

・いうほどムゲは無限大謎人間じゃない

「無限大謎人間」というなかなかにインパクトのある言葉が頻繁にムゲに向けて使われるが、ムゲは果たして「無限大謎人間」だろうか。朝の登校時、好きな人めがけて猛ダッシュし「日之出サンライズアタック」という残念すぎるネーミングセンスの超必殺技を繰り出すのは確かに普通ではない。靴を脱いでおしりから突っ込むという意味不明さもわかる。クラスメイトが日之出の悪口を言っていることに我慢できなくなり、怪我覚悟で高い場所から猫のごとく飛び降りるのも、なかなか普通ではない。だけどそれくらいじゃない?

 

ムゲは両親が離婚したことやそのせいでイジメられていたこと、父親の再婚(予定)相手とうまくやれていないこと(お互い気を遣って打ち解けれていない)など、少なからず家庭の状況に悩みを抱えているが、それを全く感じさせない。ただひたすらに明るくて元気で、太陽のような存在だ。日之出への気持ちをはっきりさせている分、行動にやや破天荒感は確かにあるけれど無限大謎というには違和感がある。むしろ「太陽人間」とかの方がしっくりくるくない?

 

・日之出の猫の受け入れ方が早すぎる

人間になったきなこが、自分がいなくなったことでいつまでも心配している薫を想って猫に戻ることを決意し、日之出に自分が本当は猫で、日之出に懐いていた太郎が本当はムゲであることを告白する。これは実際かなりの衝撃的な事実なはずだが、日之出の受け入れ方があまりにもすんなりすぎる。

もうちょっと抵抗あってもよくない??だって人間が猫になってんだよ??猫が人間になってんだよ?? もはや2秒で受け入れた感じあったから順応性高すぎでしょ日之出…。

そのあと猫の島で太郎(ムゲ)に再開した時も「お前ほんとはムゲだったんだなー」ってあっけらかんとしてたし。太郎には人間のムゲとは極端に優しくデレデレしたちょっと恥ずかしい自分を見せていただけに、ほんとだったらもう少し照れるでしょ。その順応性の高さどうやって身につけたの…?

 

・現実から逃げた猫たちに同情できなかった

猫の島にはいろいろな事情で人間をやめてしまった猫たちがたくさん住んでいる。その中でもいちばんしっかりしてそうなメス猫がいうんです。子どもを愛しているかわからなくなって、愛し方がわからなくなって、子育てから逃げてしまったって。

いやいや、なにその理由? じゃああなたがいなくなった後の子どもたちはどうする??子どもが一番欲しいのは母親の愛情だよ。それがあれば他にもうなにもいらないくらい、母親の愛情は大きくて強いんだよ。そこから目を背けて逃げ出すのはいちばんダメな理由。自分勝手すぎて同情の余地が見当たらない。この点が非常に悔しくて残念だった。

 

っていうちょっと気になる点があるので引っかかりながら観た感じはある。工房の兄ちゃんに日之出の姉ちゃん最後告白してたけど、「俺結婚するからごめん」って、工房閉まって給料出なくなるのに大丈夫!?って無駄に気になったりとかね。

 

・それでも温かくて前向きになれる作品

でも、全体的には温かくて前向きになれる作品だと思います。現実から一度は逃げてしまうけど、後悔がないように、やっぱり人間として生きることを決断するムゲ、それに全力で答える日之出。二人の素直な心が温かいストーリーを生み出したのかなと思えます。逃げたくなることなんて、人間誰しもある。もちろん逃げたっていい。でも悔いのないように生きたい。ムゲの勇気ある行動がそれを教えてくれたかな。あと、映画館で観るとまた違って良かったんだろうなーっても思う。Netflixだとちょっと勿体ないね。

 

ヨルシカの歌はぜんぶよかった。もう声が好きです。詩が好きです。まだにわかだからもっとこれから聴いていきたい。