邦画

映画『騙し絵の牙』【ネタバレ感想】騙されるとわかってわかってて騙されたい人へ

完全にキャッチコピーに釣られて観にいってきました、映画『騙し絵の牙』。

『逆転に次ぐ逆転劇!どんでん返しのラスト! 最後に笑うのは誰だ?!」とか、『登場人物全員がウソをついている!」とか、大胆不敵なフレーズに興味惹かれるしかないじゃないですか。もうなんか騙されるとわかってて騙されたいなって。爽快なまでに騙されたいなって。そんな時、あるじゃないですか?うん、ないかな? まぁあってもいいと思う。

 

映画始まってすぐに、物語の舞台となる大手出版社「薫風社(くんぷうしゃ)」の社長が死んじゃうんですよ。で、そこから始まる権力争い、ウソ、騙し合い。これが見どころになってきます。キャストの豪華さ半端ない。大泉洋、松岡茉優、佐藤浩市、佐野史郎、斎藤工、中村倫也、木村佳乃、池田エライザ、宮沢氷魚、リリー・フランキー、我が家の坪倉…。確かにもう全員クセモノで、みんな腹の中で何考えてるのかわかんないの。個人的には坪倉がツボでした。いい味出してた。

 

というわけでがっつりネタバレ含めて感想を書いていきます。未鑑賞の方はご注意を。

予告はこちら

映画『騙し絵の牙』【予告編】大ヒット上映中!

 

 

速水(大泉洋)の軽快なしたたかさと牙

結局ね、”大泉洋”なんですよ。大泉洋といったらこのブログでも絶賛しました『恋は雨上がりにように』での小松菜奈との掛け合いが最高だったんですけど、結局なんでも”大泉洋”にしてしまえるのがすごい。もう役柄なのか本人のまんまなのかわかんないけど、あの”大泉洋”感を役として演じられるのがすごいです。超自然。

 

大泉洋が演じる速水は薫風社で雑誌「トリニティ」の編集長を務めていますが、新社長の東松(佐藤浩市)から絶版の危機を匂わせられます。それからね、トリニティを売ろうと奔走するんですが、チームからは外から来た厄介者扱いがすごい。坪倉めっちゃ嫌そう。

 

それでもトリニティを成功へと導く速水の策

①二階堂大作(國村隼)の起用

まずはこいつ。伝統ある「小説薫風」を支えてきたという自負がありつつも、実際は取材と称してワインの美味しい国々への旅費を請求してくるのでこいつのおかげで小説薫風は赤字です。あ、でも小説はね、いいもの書くっぽいですよ?

謝罪といって高野二人だけにさせて、きっと酔った高野は二階堂のプライドを刺激すると狙ったんでしょうね、そして来ないかと思いきやウエイターの間合いでやってくる。しかも安いワインで小馬鹿にして畳み掛ける。速水が計画していたのは二階堂の過去作品の漫画化でした。予想外の企画に、二階堂がハマった。

 

②「バイバイを言うとちょっとだけ死ぬ」作者の矢代聖(宮沢氷魚)の起用

高野が落とした小説の原稿を読んで、売れると判断した速水もやはり眼力が鋭い。そしてその著者がベストセラー作家の神座詠一(かむくらえいいち)(リリー・フランキー)だと気づいたことが半端なさすぎる。さらに前の仕事で知り合ったイケメンの偽作者を連れてくるの、博打すぎる。が、この博打の何がすごいって速水はこれで三つも得するんです。

トリニティの注目を上げることに成功

矢代は高身長イケメンですから女性の注目は浴びますし、後述する城島咲(池田エライザ)とのコラボでさらに注目を集めます。まぁ実は速水と結託して騙していたわけですが、よく話に乗ったよな…。最後は俳優諦めて愛媛の実家でみかん作ります、いい思い出になりましたとか言ってたけど、お前そのための思い出作りにしちゃやることけっこう派手よ? ルートによっちゃ捕まってもおかしくないよ??

 

神座のおびき出しに成功

神座の作品だと気づいた速水は、偽の作者を立てて神座本人をおびき出すことに成功しました。マジで博打。これで作者が神座じゃなくて本当に別の作者が出てくれば、雑誌の編集長という立場的にもヤバかったでしょう。まぁでも高野でも捕まえられなかった神座を結局、おびき出しました。

 

宮藤常務ならびに小説薫風を退かせることに成功

あの記者会見は騙されたね。完全に。坪倉に裏切られたかと思いきや、もはやそれも狙いだったという。しかもメディアの前で「本当は自分が書いたんじゃないんです。友人が書いたのを出版社に送ってしまったんです。もう僕は世間から姿を消します…」「え、小説薫風から出せば芥川賞取らせてやるって言ったじゃないですか」と言いたい放題。お前、宮藤常務とか小説薫風になんの因縁もないのにすごいな。 

というわけで最強のサイコパス矢代のおかげで宮藤常務と小説薫風は失墜します。

 

まぁ、かき回してくれたよ矢代くん。ほんとすごい。常識を持ち合わせていたらこんなこと怖すぎてできないでしょ…。

 

③城島咲(池田エライザ)の起用

モデルの城島咲が匿名投稿で話題になった作品の作者「ジョージ真崎」と見抜いたのもすごい。高いアンテナで情報をキャッチして、広い教養で人に上手に接近していくんだよな、速水は。当然あの城島咲が書くということで世間の関心は高まった。

 

で、なんなら城島咲が捕まったのも、もはや速水の狙いではないかとさえ思えてくる。ストーカーに悩ませられていたこと、なのに矢代と遊んでいるところをわざとスクープさせているところ、全てがトリニティが売れるための注目集めになるし、最終的に城島咲がストーカーに襲われて発砲したことも、もはや最強の広告になった。もうわからない。こわい。大泉洋、こわい。

 

でも速水の真の狙いは…?

トリニティは逮捕された城島を表紙に使ったまま発行したので、広告は手を引いたもののバカ売れしたので結果的に大成功しました。東松社長にその手腕を買われプロジェクトKIBAの担当役員として誘われるものの、速水の真の狙いはKIBAの阻止でした。KIBAは

K=言葉

I=image(イメージ)

BA=場

として、大型物流センターを自社で構え、読者に直接コンテンツを届ける薫風社存続のための切り札として計画が進められていました。が、もう五年も前の話でもはや古くなってしまったのです。

そして速水は実は先代の息子である伊庭惟高(いば これたか)と結託していたのです。伊庭は飛ばされたのではなく、アメリカでアマゾンとの提携商談をまとめていました。薫風社存続のために、大規模な社内改革とアマゾンと提携していくことが真の狙いだったのです。でもこのチラッと出てきておいしいとこ持ってった中村倫也、ずるすぎ案件です。ただの息子じゃなくて、カッコよく登場して、ちゃんと頭も切れる男の存在感が半端なかった。

 

まぁかくして速水の目論見は大成功。次は世界かな!とか大口を叩いちゃいますが、ここでようやく松岡茉優の話をしていきましょうか…?

高野恵(松岡茉優)が優秀すぎる件

新人編集者の高野は伝統ある薫風社のブランド文藝「小説薫風」の編集チームなのですが、伝統やバランスを重んじる社風に合わず辛酸を舐めまくってます。でもこの高野、驚きの敏腕さ。

 

二階堂大作の40周年パーティーで彼の小説を正直に「古い」と感想を述べて険悪な空気にしますが、高野の批評は適切でした。後の食事の席で謝罪しながらも「謝罪というか、あのような場で乱暴な意見を述べて、ちゃんと説明できなかったのが失礼だったな」と酔いが手伝って舌好調。「時代に合わせて更新すべきところは、べきところですからね」みたいなこと言ってた。そして酔ってる松岡茉優のかわいさは異常。結局二階堂も高野が気に入って、速水の「過去の名作をコミック化してトリニティに連載する」という策に乗ります。

 

「バイバイを言うとちょっとだけ死ぬ」を見出したのも高野。新人賞の選考会でもちゃんと意見を述べ、新しい時代を切り開く作品と絶賛します。良作を見抜く眼力は確かにある。それを良い方向に編集する腕も持っている。

 

神座(リリー・フランキー)の発見も高野。神座が消息を絶った経緯、つまり、過去に薫風社が彼の作品を最後までの修正を待たずに出版したことのいざこざがあったことを知った高野は、その作品の原稿を見つけ読み込み、神座がこだわろうとした表現から航空ライセンスを取ったことや実際に取った飛行場を探し当てます。わりとさらっと流れてたけど、コナンかな? ってくらいの推理力。

 

そして最後に笑ったのも高野!!

 

「バイバイを言うとちょっとだけ死ぬ」の筆直しも作者の意図を汲んでいて、完璧。実家の本屋に神座の本を買いに来た女子高生の「アニメも映画化もされてないから、本読むしかない」という言葉から着想を得て、どこにいても物が変える時代だからこそ「逆にここでしか買えない本」として神座のカムバック作品を大々的に売り出します。しかも定価3万5千円。それでも売れてしまう神座のすごさも半端ないけども! ある意味「ここでしか買えない」という希少価値を極限まで高めて売り出す胆力とマーケティング力。高野あっぱれでした。しかも何がいいって、速水とか他の登場人物と違って出し抜いてやろう感がない。騙してやろうとしてやったわけじゃない。いや正直少しはあったのかもしれないけど、きっと実家の本屋の立て直しと「ここでしか買えない」手法にワクワクしたという気持ちが一番強いと思います。

 

あっさり薫風社を退社して、神座の復帰作を実力でもぎ取り成功を納めた高野。速水は最後に部下に出し抜かれて悔しそうだったなー。でも城島咲の復帰作を狙っていて、まだ終わんねえぞ?感のラストでした。

 

うん、面白かった。登場人物の誰が嘘ついてるのか、誰が騙そうとしているのか、展開が早いけどちゃんとわかりやすかったし、ちゃんと騙された。

 

騙されるとわかってて騙されたい人はぜひ観てほしいと思います。

映画『恋は雨上がりのように』ネタバレ感想 ひたむきな想いと優しさが雨と共に溶け合っていくこんにちは。さいちゃん(@saichans_b)です。 やっと観れました。小松菜奈の出演映画を観たのはこれで7作目。『渇き。』『溺...