邦画

『湯を沸かすほどの熱い愛』ネタバレ感想 「生きたい」に号泣必至の大傑作

こんにちは、さいちゃん(@saichans_b)です。

ずっと気になってる映画だったんですけど、フォロワーさんに「どちゃくちゃ泣くよ?? なんでまだ観てないのか信じられない」って言われて、これは早く観ないとまずい…とNetflixで観ることにしました。Netflixは神。

あらすじを見ると、

銭湯「 幸(さち)の湯」を営む幸野家。しかし、父が1年前にふらっと 出 しゅっ 奔 ぽん し銭湯は休業状態。母・双葉は、持ち前の明るさと強さで、パートをしながら、娘を育てていた。
そんなある日、突然、「余命わずか」という宣告を受ける。その日から彼女は、「絶対にやっておくべきこと」を決め、実行していく。

とあって、「余命」系かぁ…そりゃ泣けるだろうけど、同じような作品いくつもあるしなぁ…と、ちょっと斜に構えちゃう自分がいて、自分の中でハードル上げて観てみたんですよ。そしたら、

もうほんとに号泣、大号泣。映画でこんなに泣いたの久しぶりです。

本当になんで今まで観てなかったのか信じられない。観てこなかった人生を後悔しました。でもここで観れてよかった。まだ観てない人はぜひ観てきてほしい。

 

本作はキャストが本当に素晴らしいです。

主演は宮沢りえ。第40回日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞を本作で受賞しています。余命3ヶ月を宣告された幸野双葉を演じますが、もうさすがの美しさと強さと儚さ。この役は宮沢りえさん以外に考えられない。あとで書きますけど後半の一言でボロ泣きしましたから、僕。

 

その夫である幸野一浩役がオダギリジョー。こいつがまぁかなりのクズofクズなんですけど、なぜか憎めない。オダギリジョーから滲み出るだらしなさとクズさと優しさがうまい具合に緩衝材となって、嫌悪一切なく物語を見れるという奇跡。

 

その娘である安澄(アズミ)を演じるのが杉咲花。宮沢りえさんと並び、最優秀助演女優賞と新人俳優賞を受賞しています。表情、声の震わせ方、演技が天才すぎる。辛い時、悲しい時、苦しい時、頑張った時、口をギュッと一文字にして結ぶのが好きでした。

 

以下、感想書きます。ネタバレありなので注意。

予告

10/29(土)公開 『湯を沸かすほどの熱い愛』本予告篇

 

開始10分でいきなり泣く

「湯気のごとく、店主が蒸発しました。当分の間、お湯は沸きません」

始まったーっていきなり目に飛び込んでくるのがこの貼り紙。いや、夫が蒸発したら悲壮感はんぱなくて落ち込むと思うんですけど、どうでしょうかこの茶目っ気感。これは間違いなく妻の双葉が書いてるんですが、とつぜん逃亡した夫への怒りと嫌味をぶつけながらそれでも前向きに生きようとする強さを感じます。

 

中学生の娘の安澄、朝からご飯食べようとしないし「お腹痛い」とか言って全力で学校行きたくないオーラ放つんですよ。いじめられてるのかな?って思ってたら案の定いじめられてて、クラスの女子たちに制服に絵の具ぶちまけられまくって。でもいじめを認めようとせず、自分でやったと言い張るんです。双葉は当然事態を承知しながら、「何色が好き?私は断然、赤。情熱の赤が好き」って笑って言って、一緒に自転車で帰る。安澄にとって母親だけが心の拠り所なんです。

で、そんな中双葉は突然倒れて、医者からステージ4の末期ガンと告げられるんです。2、3ヶ月しか生きられないと。え。待って。じゃあ安澄はどうするの??お母ちゃんが死んじゃったら安澄はどうやって生きていったらいいの???っていきなり感情移入しちゃって泣いちゃいます。これが映画始まって10分ほどの話。この作品はクライマックス待たずにいきなり泣かせてくるから。

 

でも物語はここからです。ここから母双葉の決意と、その強さ、そして家族の愛を観ていくんです。

クズ夫があっけなく連れ戻される件

自分が死んだら安澄はどうする??支えてくれる家族がいないと生きていけない。じゃあどうするか。夫を探して連れ戻すんです。探偵の滝本(演:駿河太郎←半沢直樹出てたね!伊勢島ホテルの湯浅社長だね!!)によってソッコーで見つかり、あっけなく連れ戻される一浩。蒸発した理由が明らかになります。

・11年前にキャバクラのお姉ちゃんと浮気(一回セックス)

・去年たまたま別の店で遭遇

・あの時の子どもがいると打ち明けられる

・一緒に暮らしてほしいと懇願される

・頼みを飲み、いきなり蒸発

・そしてその女は一浩と子どもを残して逃亡

 

なにこの展開???こんなことある???

 

まぁ浮気した一浩もだめだめですが、子供の鮎子をおいて逃げちゃう女もどうかしてる。”仁義”って言葉が辞書にない世界なのかな。「仁義を欠いちゃあこの人の世は渡っちゃいけねえ」って白ひげが言ってたの知らないのかな。

鮎子に手紙に残して「今度の人とはうまくやれると思う」って書いてたので、一浩は父親じゃないと思うんですよね。父親だったら”今度の人”なんて書かないで”父親”って書くからね。

 

まぁいずれにせよ、双葉は一浩を連れ戻すことに成功し、娘の安澄と愛人の娘の鮎子と家庭環境複雑すぎだろって4人家族がここに誕生したわけです。

ふり絞った安澄の勇気に泣く

心配なのはいじめられていた安澄です。いよいよ制服まで隠されるという陰湿すぎるいじめを受けた安澄は、ついに不登校になりかけます。でもそれをけっして許さなかった双葉。

「今日諦めたら、二度と行けなくなるよ」

「逃げちゃだめ。立ち向かわないと。今自分の力でなんとかしないと」

「何にも変わらないよ。お母ちゃんと安澄は」

 

これは自分だったらできない。もし僕が母親だったら、娘を不登校という形で逃げさせる選択を取ると思う。でもそれは正解じゃないんだと思った。ここで逃げたら一生負け続けることになる。双葉は自分がいなくなった先の未来を考えてる。安澄に必要なのは、逃げるための安息地ではなく、立ち向かう勇気だった。そのあとの安澄は立派だった。

 

体操着で登校して、教室で体操着脱ぎ捨てて、勇気をふり絞っていうんです。「制服返してください」「体操着は着ません、今は体育じゃないから」って。

安澄は一世一代の勇気を使ったと思う。その勇気を振り絞るために、母親がくれた下着をつけていたのが泣けました。母親の勇気を少しでも借りたかったのかなって思った。がんばった。よくがんばったね、安澄。

 

鮎子の健気さに泣く

鮎子もほんとかわいそうな子です。いきなりやってきた男が父親だとかいうし、母親には捨てられたようなもんだし、今度新しい家に連れてこられたと思ったら銭湯手伝わされるし、もはや誰とも血の繋がりないからね。環境が不遇すぎてグレまくるところですよ。でもこの鮎子がどこまでも健気でいい子なの。

 

どうしても母親が恋しくなって、前住んでたアパートまで一人でいって、暗くなって怖くても部屋の前でひとり寂しく泣いてて。母親に会いたいっていうのが一番だけど、鮎子だって幼いなりに気を使ってたんです。見ず知らずの自分を住むことで迷惑かけてるとも考えたんだと思います。だから翌日の朝、鮎子が決心したようにいう言葉の純粋さに泣いちゃう。

「これからは もっともっと 一生懸命 働きます …ので できればでよいのですが この家に いたいです。でも… でも まだ ママのこと 好きでいても …いいですか

 

鮎子ーーーーー!!!!(涙)

 

すかさず双葉が「バカ!当たり前じゃない」っていうんですけど、そういう愛の深い家族なんですよね。突然やってきた愛人の娘だから忌み嫌われてもおかしくない。深い愛で包んで、包まれて、最高の素敵な家にやってきたね、ママどこかにいっちゃって寂しいと思うけど、この家にやってこれたのは本当に幸運だったと思う。

それにしても朝からしゃぶしゃぶって豪華すぎでしょ見てて胃もたれしちゃったゾ。幸野家は誰かの誕生日とか記念すべき日、元気出す日とかは決まってしゃぶしゃぶで、それは朝昼夜関係ないんだなって。

双葉、安澄、鮎子の三人の旅行の先に待つさらなる衝撃

温かい家族のおかげで元気を出した鮎子は、安澄ともすっかり仲良くなって三人で旅行に出かけることになって超嬉しそう。

途中で謎のヒッチハイク青年「拓海くん(松坂桃李)」拾って、そんな通りすがりの拓海くんにもしっかり目標を与え道筋を示してあげて信頼される双葉、どんだけ愛深いんだよ最高かよ。

拓海くんは後からまた出てくるから一旦おいとくとして、この旅行の目的はただの旅行じゃなかったんですね。これだけ複雑な家庭環境みてきたら、もうさすがにお腹いっぱいじゃないですか。なのにまだあったんですね、さらにもう一つ特大の衝撃が。

 

カニを食べにきたお店の言葉が話せない綺麗な店員さん。実はこの人が安澄の本当の母親だったんです。一浩は双葉の前に結婚していた人がいて、安澄はその人との子供であり自分がお腹を痛めて産んだ子供ではないと。

もうこの衝撃的な事実を告げられたときの杉咲花さんの演技が素晴らしすぎた。安澄はもう中学生ですからね。今までお母さんと思ってきた人が、本当は実のお母さんじゃなかったなんて、信じられないし、信じたくない。そんなの簡単に受け入れられることじゃない。無理矢理に降ろされて挨拶する展開になった時の気持ちは筆舌に尽くしがたい。安澄にとっての母親は血の繋がり関係なく双葉であって、実の母親がどうだなんてどうだっていいんだと思った。「なんでそんな意地悪いうの?」と安澄は言います。本当にそうです。たとえ本当のことでも一生知りたくなかったことだと思う。でも双葉は言わなくちゃいけなかった。もう時間が残されていないのだから。

そしてここで小さい頃からいつか役に立つと勉強させられていた手話が繋がってくるんです。まさか実のお母さんと会話するためだったなんてね。一度道端で手話を理解していた伏線がここで回収されました。

 

安澄が制服を返してもらった後、双葉に「お母ちゃんの遺伝子ちょっとだけあった」って言ったとき、双葉はどう思ったかな。たとえ血の繋がりがなくても、本当に自分の遺伝子を受け継いでいなくても、自分の思いや新年が少しでも安澄に伝わっていることを誇りに思ったかもしれないな。

組体操ピラミッドからの双葉の「生きたい」に盛大に泣く

散々泣いてきましたが、本作で一番泣くのはこのシーンです。

一浩の一世一代のお願い、ピラミッド。「バカみたいだけど、これしか思い浮かばなくて」って一浩はいうけど、本当にそうだよ!でも最高だったよバカ!

双葉が新婚旅行でエジプトを希望していたこと、死ぬまでに一度行ってみたいと冗談でも言っていたこと、叶えようとしてももう叶えられなくて、せめてもと思い浮かんだのが組体操ピラミッド。自分が一番下になってみんなを支えていくという意思表示でもあった。ここでヒッチハイクの拓海や探偵の滝本も手伝ってくれて、なんでお前らもいるんだよって、笑いながらめちゃくちゃに泣いた。

それを見た双葉の、「生きたい…生きたい…」があまりにも切実すぎて、現実があまりにもひどすぎて、もう泣かずにはいられませんでした。

ラスト:「湯を沸かすほどの熱い愛」

最後、めちゃくちゃですよねって一浩も言ってたけど、めちゃくちゃだった。お葬式は幸野家の銭湯でやってるし、お経はデモテープだし、案内は拓海がやってるし、霊柩車の運転手は探偵滝本がやってるし。最初は「お金ないから?」って思ったけど、ぜんぜん違った。いやまさか、あの家族が何食わぬ顔であんなぶっ飛んだことするとは思わなかった。

いやほんとまさか、双葉を火葬場じゃなくて、幸の湯で火葬するなんてね。

家族で銭湯入って、「あったかいね、お姉ちゃん」「すっごくあったかい」と鮎子と安澄が言って。立ち昇った煙、赤かったです。情熱の赤。双葉の大好きな赤。

この作品のキャッチコピーは「最高の愛を込めて、葬(おく)ります」。双葉の最高の愛を受けて、最高の愛を込めて、本当に幸野家らしい見葬りでした。これからずっと温かい銭湯になるの間違いなし。

 

余命わずかの命だからといって悲観しない、双葉の強さ。ぜんぜん重さを感じさせず、だけど血の繋がり以上に大切なものを見せてくれて、深い愛を見せてくれる本当に素晴らしい作品でした。また何度でも見返したいと思う作品でした。

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