邦画

『秒速5センチメートル』心を覆い尽くす切なさに襲われる【ネタバレ感想】

こんにちは、さいちゃん(@saichans_b)です。

いきなり懺悔報告なんですけど、そもそも僕は『君の名は。』を見るまで新海誠監督のことを全然知らなかったんですよ。ただ君の名は。が最高すぎたために『天気の子』の期待が高まり、過去作品も見たくなった次第です。特にこの『秒速5センチメートル』なんて、みんな「絶望する!」とか「救われねえ!!」とかいやいや何があったんだよって突っ込まざるを得ないような感想ばかり呟いてるので気になっちゃうじゃないですか。

 

というわけで本当に気に今さら感が凄いんですけど、『秒速5センチメートル』を観ました。無事死にたくなりました。

 

以下ネタバレなので、映画を観てからの方が楽しめます。

無料でfuluで観る

 

「秒速5センチメートル」予告編 HD版 (5 Centimeters per Second)

 

『秒速5センチメートル』感想

 

終始、登場人物のセリフや佇まい、雰囲気、伝わる空気感、そのすべてが哀しみや憂い、切なさや苦しみを帯びていて、最後の最後まで絶望的な展開に心を全部持っていかれます。観終わった後はしばらく引きずる。この要因はなんなのだろうと考えて、勿論ストーリーがってのはあるんですけど、それがかなりウエイトを占めるんですけど、自分が他に考えたのは以下です。

「One more time,One more chance」が刺さり過ぎる

 

主題歌である山崎まさよしの代表作「One more time,One more chance」がどうしようもなく刺さるから。この曲はあの映画のために生み出されたのではないかってほどにリンクする。逆にこの曲が街中で流れてくれば『秒速5センチメートル』が秒速でフラッシュバックされ切なさに襲われてしまう。

山崎まさよし / One more time,One more chance

 

弾き語りの山崎まさよしの強く優しい歌声が心を震わせてくる。どれほどの時間が経ち大人になっても貴樹の心にずっと明里がいて、いつまで経っても忘れられない思いを代弁するよう。

「寂しさ紛らすだけなら誰でもいいはずなのに 星が落ちそうな夜だから自分をいつわれない」「いつでも探しているよどっかに君の姿を 向かいのホーム路地裏の窓 こんなとこにいるはずもないのに」

コスモナウトの澄田 花苗(すみだ かなえ)も、秒速5センチメートルで付き合っていた女性も、貴樹の心に自分の居場所がないことを痛感してしまう。貴樹の心にはずっと明里がいて、どこか遠いところを見つめるように、彼女を心で追っているというのがこの曲とマッチしすぎてて泣ける。

なんなら劇中の「秒速5センチメートル」でも貴樹が入ったコンビニで流れて貴樹はハッとした仕草を見せる。貴樹もこの曲に自分を重ねているのだろう。

違和感を覚えるほどの卓越すぎる言葉

 

この作品は「桜花抄(おうかしょう)」、「コスモナウト」、「秒速5センチメートル」の3部で構成されているのだけど、桜花抄からエンジン全開で切なさを纏う。貴樹によって語られる心情があまりにも詩的すぎて違和感を覚えるほど。単純に「君まだ中一だよね!?」と思ってしまう。思ってしまうのだけれど、貴樹と篠原 明里(しのはら あかり)は身体が弱く図書館で本を読むのが好きだったから、語彙力や言葉のチョイスが中一にしては卓越しているのだなと、思うことにしました

ひとつひとつゆっくり区切りながら語られる

 

この物語は基本的に明るい声がない。寂しげで、物憂げで、低く、暗く、語られる。そしてひとつひとつの言葉が、読点で区切られながら、ゆっくり語られる。それがエモーショナルな空気を作っているのだと思った。桜花抄で何度も電車が停止しいたずらに時間が過ぎていく時の「時間ははっきりとした悪意を持って、僕の上をゆっくりと流れていった。ぼくはきつく歯を食いしばり、ただとにかく、泣かないように、耐えているしかなかった」や、貴樹と明里がキスをした後、明里とずっと一緒にいられないことを悟り、「僕たちの前には未だ巨大すぎる人生が、茫漠とした時間が、どうしようもなく、横たわっていた」、コスモナウトで貴樹がメールを打つ様子を見て、花苗が「それが私宛のメールだったらいいのにって、どうしても、いつも、思ってしまう」と語るとこなど。

 

結局結ばれない二人

 

最終的に衝撃を受けるのは明里が別の男性と結婚してしまうことが第三話の「秒速5センチメートル」の最初で判明すること。東京の大学に進学し、明里と距離が近づいた二人が再開し結ばれてハッピーエンドで終わる、という展開にはならない。

クールで優秀な印象だった貴樹だったが、社会人になり荒んだ生活感が露わになる。ベランダで吸うタバコ、部屋に散らかったビールの空き缶。無我夢中に仕事に打ち込んできた意義を見失い、会社も辞めてしまう。

3年間付き合っていた女性からは「私たちはきっと1000回もメートルをやり取りして、たぶん心は1センチくらいしか近づけませんでした」とメールを打たれる。

 

ふたりは同じ日に夢を見る。13歳の積雪の冬の日に過ごしたあの夜を。物理的に距離が離れ、もう会えない、一緒に過ごせないというとてつもない不安や心配を、キスが溶かし、また桜の下をともに歩けると信じたあの夜を。だけど現実はそういかなかった。明里は別の男性と結婚する。貴樹は別の女性と付き合ってもうまくいかず、荒廃した人生を過ごす。

 

本当に救いはないのか

僕は最後の最後に救いがあると信じたい。踏切ですれ違い、自分が振り返れば、彼女もきっと振り返ると強く思った貴樹。二人が振り返ったその瞬間、電車が通ってしまう。そして通り過ぎ去った後、明里の姿はなかった。この時、貴樹は一瞬悲しい表情を浮かべ、そしてフッと笑う。歩き出したとき、彼の表情は寂しげながらも笑っていた。

明里の思いを吹っ切るにはここしかない。ここで物語は終了するから、この後の展開はわからない。だけどもし、明里が振り返っていたら、貴樹は永遠に彼女をくすぶったままだったろうと思う。最後笑って前を向いた貴樹は、もう明里とは一緒になれないことを悟り、こだわってきたのとは別の人生を歩く未来を、最後のシーンで見せている。

結論この作品すきだ

 

↓初めて終わった直後のツイート

 

僕はこういうエモーショナルで揺さぶられる映画好きなんですよね。そして映像が綺麗なのも好きです。全部で一時間ほどで終わる短い映画だから、長さ的には気楽な気持ちで見れちゃうのに心を準備しとかないと耐えられないようなそんな映画です。でもまた、何度でもみて苦しくなりたい。