感性が合う仲が良い人に一冊の本を勧めてもらって読みました。「燃え殻さんって知ってる?いま小説を読んでるんだけど、さいちゃんの文章に似てて、絶対読んでほしいなって思った」って言ってくれて、そのまま買いに行きました。
好きな人にオススメしてもらった本、『ボクたちはみんな大人になれなかった』(燃え殻さん @Pirate_Radio_ 著)をやっと読める。背表紙のあいみょんの文才も異次元なことになってる。どんなストーリーが待ってるんだろう。読みたいと思った本を読む前の、この感覚が良い。 pic.twitter.com/JosJzQENqp
— さいちゃん (@saichans_b) April 8, 2019
『ボクたちはみんな大人になれなかった』。表紙にはこう書いてあった。
好きだった人の名前を、SNSで検索したことはありますか―――?
僕は学生時代からSNSをやっている。mixiに始まり、facebook、twitter。インスタグラム、は、やってないけど。でもそのどれでも好きな人(もしくは好きだった人)を探した経験がある。いやむしろ、SNSをやっていて好きな人を探したことのない人はこの世にいるのか?いたとしたらそれは煩悩を捨て去った僧侶くらいなものでは?趣味とか、学校とか、あの子を求めて検索した経験。これは僕だけじゃない。僕だけじゃないよね。僕だけじゃないって嘘でもいいから言ってほしい。
背表紙にはあいみょん。このあいみょんの文章が凄い。いや勿論今をときめくシンガーソングライターだってことは知ってるし、曲は大好きだし、アルバムも買ったし、ライブは外れたけれど、こんなに文章まで天才だなんて知らなかったよ。
で、読み始めたんですけど、僕の文章に似てるって言ってくれたけれど、こんな文章を僕は書いたことがないし金輪際書けない(金輪際の使い方もたぶん間違ってる)。でもなんとなく、似てると言ってくれた気持ちが少しわかるような気がした。ところどころなんか似てるなって思うところもあった。でもそれは似てると言ってくれた言葉があったからかもしれない。でもその人は少なからずこの本を読んで僕のことを思い出してくれたんだなって思うと嬉しかった。
『ボクたちはみんな大人になれなかった』ってタイトル。
そもそもボクたちは何をしたら大人になれるんだろう。20歳になったら?セックスをしたら?大学を卒業したら?就職をしたら?結婚をしたら?子供が産まれたら?うーん、何をしたら大人になれるんだろう。
僕はちっとも自分が大人だと思わない。かといって、子供と思うわけでもない。大人でも子供でもない、わからないけれど、そんなどっちでもない中途半端なところに立っていて、それを長年やっている気がするな。見た目ではもういい大人なんだけど、いつになったら大人になれるんだろうなんて思ってしまう。
ウダウダと前置きが長くなってしまったけれど、結論、読み終えて、とてもいい本に巡り合えたと思いました。教えてくれたその人に感謝を伝えました。読み終えた後は、胸が苦しくなって、切なくなって、発狂しそうになって、泣きそうになって、締め付けられるような痛みがありました。今は読み終えた勢いでそのままこの文章を書いてるんですけど、そして感想を言いますけど、「くぅぅぅううううううう、うああああああ、くっ、はぁぁぁぁああああああああああああ」って感じです(語彙力)。
所々で一文一文が心を突き刺してきました。刺されて、見えない血を流して、瀕死になりながらも続きが気になって、でも読み進めるほど終わるのが寂しくなって、ゆっくりゆっくり読みました。一気に読み切るって感じの小説ではないかな、だって苦しくなるから。ドMな人は一気読みしてよし。おうけい。
この小説の主人公はバブルがはじけた後の時代の激動を生きていて、その時に雑誌の文通コーナーで出会った人と恋に落ちていくんです。その過去に恋をしていた相手に、自分よりも好きになった人を相手に、誤ってfacebookの友達申請をしてしまってからの物語。紡がれていく時代と思い出。出会う人、去っていく人。印象に残った言葉がたくさんあった。
”生きていると言葉なんかじゃ救われない事ばかりだ。ただその時に寄り添ってくれる人がひとりいれば、言葉なんておしまいでいい”
“彼女は、学歴もない、手に職もない、ただの使いっぱしりで、社会の数にもカウントされていなかったボクを承認してくれた人だった。あの時、彼女に毎日をフォローされ、生きることを承認されることで、ボクは生きがいを感じることができたんだ”
僕は普段暇さえあればtwitterを見ているので、こんなSNSに呑まれた日常を生きている僕にはわかる気がする。僕は言葉が好きだし、言葉を大切にする人が好きだし、だけど言葉には限界があるって思うこともある。好きって感情が、「好き」を超えてしまうことがある。どうしたら伝えられるかわからないこともある。言葉では救われない事もある。言葉のいらない空気感を心地いいと感じる人が隣にいてくれればそれは素敵なことですね。
目次から数えて162ページの短い小説だから、何か読みたくなった人はぜひ。
但しこの小説は読むタイミングによっては、きっと泣き崩れる人もいると思うので、その点はご注意を。
僕は読めて嬉しかった。何度も言うけどおススメしてくれた人に感謝したい。スーの忘れものとか。言いたくて言えなかった言葉とか。言いたくてもう会えなくて飲み込んだ言葉とか。そんなストーリーを。本をおススメする/されるっていいですね。好きな人が好きな本を読んで、語り合いたいストーリーがあるのは。